刀自の刃/蒸発王
知る
刀自の友人で
独り暮らす彼女の良い話し相手だった
お断りするのでしょう
と尋ねると
さて
どうしましょうね
と伏し目に答える
彼女の目尻が
薄く恋に色づいているのに気がついた
独り灰色の息をする刀自に
少しでも色がつくならば
私も其れで良いと思った
もう十数年
新しい刀を納めても
良いと思った
数日後
彼女は断った
予想が外れた私は
視線だけで
刀自に問うと
男が刃ならば
女は其れをおさめる鞘なのです
なまくら刀でも
鞘が立派ならば名刀
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