髪長小町/蒸発王
姫様が
嘘をついた時だけでした
髪が伸びて
貴族の姫らしくなった姫様に
離れていた人間はどんどん戻ってまいりました
姫様は
皆大好きよ
と笑って前髪を伸ばし
隠れた顔を私に向け
お前だけは大嫌いよ
と泣いて
ますます顔を隠しました
美しく成長した姫様には
毎日恋文が届きました
姫様は
歌を大変上手に嗜まれましたが
お返事に歌を作ると
必ず
御髪が伸びました
婆や
どうして人は
この髪を美しいと言うのかしら
それも また
嘘なのか
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