緋恋の指輪/蒸発王
母は
美しい
緋色の指輪を持っていた
『緋恋の指輪』
14の時のことだ
母の化粧箱の中には
翡翠のブローチに
銀のイヤリング
真珠の髪飾りや
琥珀のネックレス
色とりどりの宝石があった
中でも
一番美しいのは
ガーネットの指輪だった
血とも炎ともつかない
燃えるような
緋色のガーネットの巨石から
丸ごと採り上げたような
全身ガーネットでできた指輪だった
光にさらすと
透き通った
水面のような緋色が
ゆらゆらと揺れる
美しい
指輪だった
母の化粧箱にある宝石は
私が大人になったら全
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