髪長小町/蒸発王
 
姫様は
長い長い
艶やかな御髪を持った

小町と呼ばれる姫様でした


『髪長小町』


私のお育てしたお姫様は
それはそれはお美しく
雪よりも透けるような白さに
眼尻と唇だけがうっすらと赤く
一重の睫の間からは
夜空の闇と光を零れさせておりました
うりざね顔にすっと通った鼻筋が
聡明で


笑えば
桜の花が咲いたようなお方でした


もっとも
うら若き乙女ですもの
殿方に見せる姿など
牛車の御簾からちらりと魅せる
長い髪の毛だけでございましたが


噂は呼ぶもの歌うもの


あんなに長い
[次のページ]
   グループ"【女に捧ぐ白蓮の杯】"
   Point(4)