髪長小町/蒸発王
姫様は
長い長い
艶やかな御髪を持った
小町と呼ばれる姫様でした
『髪長小町』
私のお育てしたお姫様は
それはそれはお美しく
雪よりも透けるような白さに
眼尻と唇だけがうっすらと赤く
一重の睫の間からは
夜空の闇と光を零れさせておりました
うりざね顔にすっと通った鼻筋が
聡明で
笑えば
桜の花が咲いたようなお方でした
もっとも
うら若き乙女ですもの
殿方に見せる姿など
牛車の御簾からちらりと魅せる
長い髪の毛だけでございましたが
噂は呼ぶもの歌うもの
あんなに長い
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