き/ピッピ
都市部には真っ黒な雨が降り
空を染めて夜が始まる
世界中のカーテンは
住人を慰め始める
高い声は犬の声
盛りをつけた犬の声
許しはいらない
首輪は遠くの国に繋がっていて
引っ張ればいつでも首を括れる
静寂な帳の中に
いつまでも血のにおいがしない
脳内のテープレコーダーが途切れるのを
僕らはいつまでも怖がっているけれど
いつまでもそれが途切れることはない
き
という音の連続が
それでも生を持つ僕らに
いつまでも鳴り渡っている
正しい音は理解されない
歪んでいる音こそが
正しく理解されているのだ
昔出した筈の声はもう出ないのだった
僕らが
触れただけで死ぬ生物じゃないから
こうやって触れ続け合っている
接触面の箇所によって
出る声が異なることも知っている
首を絞めれば死んでしまう
だから身体を重ねるのだ
中指がどんどん
あなたの神経にめり込んでいく
がぶりと齧れば
月 欠ける
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