ひきてゆかしむ/佐々宝砂
をひきひき、そうなるしかないであろう少女の宿命を羨んだ。
*
少女の戸口に嘆く声が多くなった。
何日も旱(ひでり)が続いていた。
水乞の声は西からも東からもあがった。
しかし人外のものと契ったからとて、
少女に何ができただろう。
少女は雨乞のしきたりすら知らなかった、
水呑百姓の娘として生まれた少女に、
神主の祝詞(のりと)は意味のない音の羅列ときこえた。
それでも少女は期待されていた。
少女はとにかく巫女らしいと思えるなりをして、
それらしく幣(ぬさ)を下げた榊をかかげ、
村人を引き連れ山中の渓流へと向かった。
滝壺の少し下にある瀞(とろ)が
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