ひきてゆかしむ/佐々宝砂
 
をみるたびにほとんど物理的に胸が痛くなった。しかしよく考えてみれば作者の行動パターンもその人物と大同小異であり、最悪のタイミングで現場に現れ最悪のタイミングで不用意な批判を展開するものだから、しばしば誤解され揶揄される。それにしても、いつも時機を逸するその人物といつも最悪なタイミングで現れる作者とのあいだに、すれ違いの外いったいどんな物語が生まれ得よう。作者は時折腹立ちまぎれに毒づいた。どうせなら死ね、美しく死ね、死んだら引きずってやる、ベアトリーチェのように、ではなく、マノンを引きずって歩いた男のように。しかしいかに毒づこうともそれは作者の本心ではなかった。作者は作中の少女を羨んだ。類語辞典をひ
[次のページ]
   グループ"Light Epics"
   Point(4)