逆巻く酒巻/佐々宝砂
五十歳だったはずで、フォークリフトの免許すら持たない詩人肌フリーター三十歳に天命など知られるわけもないのだが、決意してしまったものはしかたない。しかし「逆巻く」とはどんなことなのであろうか、甲斐性なしだが生真面目な酒巻はまず辞書を引いた。
さかま・く 3 【逆巻く】 (動カ五[四])
水流がぶつかり合って激しく波立つ。また、わき上がるように渦を巻く。
「―・く波」「―・く炎」「―・く水も早かりけり/平家 9」
三省堂提供「大辞林 第二版」より (goo辞書検索)
酒巻は人間であって水流ではないから、波立つことは難しい。どうしたらいいだろうかとふとつけたテレビに渦潮が映った。酒
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