おまん瞑目(おまんとくれは、その壱)/佐々宝砂
 

  黒髪の上に輝くは、
  雪より白い柔肌に目を奪ふばかりたをやかな、
  天女と見紛ふ姿であつた。

  おまんよ。
  儂(わし)はおまへが欲しい。

  そのときおまんは思つたのだ。
  このひとについてゆかう、と。
  このひとが鬼であらうと蛇であらうと、
  このひとの手となり脚とならう、と。


 おまんは草庵に瞑目してゐる。
 瞑目しても経は読まぬ。
 頭は丸めたがおまんは尼ではない。
 見せしめに剃髪された頭には、
 今もなほ傷が残る。
 尼ではないおまんの胸に去来するのは、
 昨日もけふも、
 たつた一つの呪ひである。

 鬼となれ、
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