血と百合の遁走曲/佐々宝砂
筋にくっきりと刻印された紫の傷跡。
彼女から少しずつ離れてゆく信徒たち。
ざわめき。
まき散らされた百合は拾い集められ、
捨てられた。
彼は弥撒を中断し、
人々に口止めをした、
しかし今日のうちに噂は広まるだろう。
村は小さく人々は娯楽に飢えている。
誘惑
しかし私はあれを拒めません。
むしろ毎夜私はあれを待っているのです、
あれがやってきてはじめて生きていると感じるほどに。
まず犬の遠吠えで目が覚めます。
それから胸が悪くなるような臭いがするのです。
息苦しい、と思うと同時に、
胸に重みを感じます。
それから首に冷たいものが触りま
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