血と百合の遁走曲/佐々宝砂
 
ります。

すると私は何がなんだかわからなくなります、
いろいろなことが突然に変わってしまいます、
むかつくようだった臭いは甘く重い薔薇の香に、
喉に押された冷たいものは甘く熱いくちづけに、
そしてそのあと私は泥のように眠ってしまいます、
朝がきても目眩がして起きることができません。

今朝は無理矢理に起きてみたのです。
このところずっと弥撒に出られませんでしたから。

夜に目覚めるようになったのは、
あの墓に百合を捧げてからです。
海に背を向けたあの墓です。
なんとはなしに私はあの墓が気になっていました。
小さなころからです。
けれど百合を捧げたのはつい最近のこ
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  グループ"Light Epics"
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