創書日和「器」/虹村 凌
机の上に取り残された食器が
うらめしそうな目でこっちを見ている
脂っぽい食べ物でも入ってたんだろう
白く黄ばんだ何かがこびりついて
誰かの吸殻が取り残されている
あのロゴはあのストライプは
どの煙草だったか思い出せない
取り残された僕以外の恋人達は
明け方までに何度もキスをして
明日になったら何処へいくのかと囁きあってる
夜中は軋みながら朝に向かう
すり減らしながら朝に向かう
置いてけぼりを食らったね
そう言って隣に座り込む女の名前を思い出せないまま
ゆっくりと目を閉じる
名前は呼ばれない
髪の脂の匂いが
する
肩に体重が
かかる
耳に息が
がしゃん
部屋を割る
眠気を割る
食器を割る
女の頭を割った
血だまりに浮かんだ吸殻は
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