創書日和「音」/虹村 凌
 
「あえいうえおあお」

明日はきっと雨が降るから
どこかに出かけようと思うんだ
そう遠くじゃなくて
どこか電車ですぐいけるような街へ
いつもは持たない傘を持って行くよ
君はいつも持ってる折り畳み傘を忘れておいで
中学生みたいにドキドキしながら
相合傘をさして井の頭公園を通り抜けよう
あえいうえおえお
弁天池に向かって叫ぶ
あえいうえおあお
喉を潰しかけた劇団員の後ろで
不埒な事ばかり考えて
煙草を吸う
井の頭公演の灯りの感覚が遠いのは
暗闇に紛れて口を付ける為らしい

持つ事が嫌いで
いつもは持たない傘を
どうして今日に限って持って出たのか
それに気付い
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