移行・不安(未完)/
木立 悟
あの煙突は窓ではないのか
内に鏡が巣喰っているのではないか
めまぐるしく変わる空の色を
まるで気にもとめずに
昼の昼たる所以を
その内部から投影せしめている
あの灰色
あの煉瓦色
あれは窓ではないのか
答えるものの無い
すべてが鏡と化した翳りの午後に
私は私の姿も見れずに這いまわる
折れた柱と
焼け焦げた森
煙は渦巻き
新たな鏡の痣となり
その肉色の内に私を隠してくすぶっている
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