天国への調べ/ajisai
と竪琴を爪弾き始めた
少年の演奏で少女は
ワンピースの裾をひらめかせて
華麗なステップで踊りだした
彼女は月明かりの下、軽やかに風の様に舞い
月の精霊が踊っているかのようだった
今、その時の姿のままにあの時の少女が
白い翼を背に広げ、目の前に立っているのだ
天使はにっこりと笑って
「また踊りたくなったら
演奏してくださるかしら」
と無邪気に語りかける
「喜んで、それが私の生甲斐ですから」
男は答え、笑みを返す
天使と男は楽しそうに天国の門を
くぐっていった
死神も何だか嬉しくなって二人に手を振って別れを告げた
「さようなら、天国であなたの素敵な歌を
響かせてください」
天使と男も振り返り、笑顔で手を振った
やがて門は静かに閉まっていった
幸せな時が過ごせますように
死神はそう願った
きっと彼の調べは
天国に響き渡りみんなの心を
和ませ癒すことだろう
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