殺意/恋月 ぴの
 
いつまでも気付かなければ良かった
と思うことがある
熱帯夜の寝苦しさに目をふと覚ますと
わたしの知らないおとこのひとが
わたしの横で寝ていて
二つ並んだお揃いの枕と
ふたりで寝るには狭いベッド
左の乳房には五本の無骨な指先で
強く揉みしだかれた感触が疼く
そんな夜が明ければ
そのひとのために朝食を作って
「いってらっしゃい」
と笑顔で見送るわたしがいる
玄関にかかげた真新しい表札には
わたしの知らない苗字に添えて
わたしのなまえ
掃除でもしようと引き伸ばした
掃除機の電源コードは
いくらボタンを押しても戻らずに
だらしなく伸びきったままで
いつも恋愛小説を読
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