夢の手触り/石瀬琳々
 
冬の城明け渡すとき水中で愛を交わしてウンディーネのように


雨そして夢から醒めた余白には君のではない愛の降りしきる


君の目に春を捧げる、遠い日に誰かに焦がれ散りし花びら


海鳴りを聞いて一夜の契りとして花をちぎって含む眠りを


夢の花白くていっそ目を閉じる抱きしめられて海の果てまで


砂浜にさびしく光るガラス片破船の旅を君を夢見る


夏は行く忘れ去られた塔の影窓越しに見た輪回しの少女


幾千のひかりに打たれて口づけるほろびいくものなつかしいもの


たぐり寄せる夢の手触り近づいて遠のいてゆく秋草の果て



  グループ"薊道"
   Point(6)