5.緩火と太陽/朽木 裕
耳を塞ぐと聞こえるんだ
自分の鼓動 命の脈動 神経系統の音
音が音が聞こえるんだよ
君の君の君の声が
「君はどうして僕を愛してくれるの?」
「どうして、ってそりゃあ君が珍しいサンプルケースだからね」
「…サンプル?」
「こんな醜い俺を迷いもなく愛してるなんて嘯く人間は
初めてだからさ」
云って君は半分白い色の髪をがりがりかきむしった。
顔は火傷でただれている。
その奥で意思の強い瞳が黒曜石のように輝く。
「だって綺麗だもの」
「…どこが、」
嘲るように哂って煙草の煙を僕に向けて一息。
「からだの音が綺麗だよ、あと瞳。心は、まだ見えな
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