小詩集【レトロな猛毒】side.A/千波 一也
 
声が後ろに聞こえた


疑うわけでも
信じるわけでもなく
この目にとまった
毒虫の色の鮮やかさに
誰もが避ける窓辺へ落ちた、
わたし

都合のいいセリフなら
いくらでもあるから
安易な確かめには
頼らなかった

頼れなかった、とも言える


やがて
音もなく毒虫は離れたけれど
そこに生まれた安堵の声は
ひとつの檻だと
わたしは思う


持ちすぎた色を
毒々しいと言いたげな
空からの拒絶を浴びながら

わたしはいつか
閉じられた、
もの




五、リボンと雪は


リボンと雪はよく似ている

あこがれているのに

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