小詩集【レトロな猛毒】side.A/千波 一也
 
れば
愛しいほど
無邪気に殺しては
殺されてしまう
あのひとと
私とが

むずかしい嘘のために
ほんとが消えても
喜怒哀楽は
覆らない

私、めでたし
あのひと愛でつつ

微笑むために必要なのは
赤かも知れない
黒かも知れない

あやうい爪は何のため

未明の夢の鏡の中で
私はあたまに
角を見る




四、毒虫


開かれた窓に誘われて
毒を持つという虫が
飛んで入った

あわてて誰もが走り去る
入口のドアを
出口にかえて
みんな平等に
逃げてゆく

わたしは
一人ぼんやりと
歩み寄る、
窓辺

叱る声が
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