5月の職員室/ピッピ
る。捨てる?全てはそこにあるじゃないか。
捨てるとは切り離す、ということだ。
黄ばんだプリントがゴミ箱から覗いている。
ああ。躊躇い傷。躊躇い傷がある。今気付いた。
赤ペンで、このプリントに、先生が何かを書こうとして、やめた。
そんな跡。赤い、たくさんの点々。
新任の先生が書こうとした言葉は…言葉も、
インダス文明の何かのように、移住する何かのように、
右耳から左耳に流れてしまったのか。
耳を澄ますと、聞こえる。通り過ぎたはずの音が。
嘘みたいに。でもそれは、時間を越えて、
黄ばんでいる。ぬるっとした。五月の。
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