Love Boat/恋月 ぴの
 
なくあきらめてしまった様子が伺える
これもひとつのお祭りなんだろうか
あなたと出かけた縁日の夜
木綿の浴衣に着替えて
人ごみに揉まれながらお参りをして
金魚すくいで遊んで
ビニール袋には小さな金魚が二匹
迷子にならないようあなたの腕を掴んだつもりが
知らないおとこのひとの腕だったりして
なれない鼻緒がとても痛かった
ローからセカンドへシフトチェンジの度に
左手のひらを伏せたまま
おいでおいでをするかのように
白いワンピからのぞく膝頭をかすめてゆく
山側の景色はあまりにも退屈すぎるから
なんだか寝たふりをしたまま
思わせぶりのすそをちょっと乱して
すぐに破けてしまう金魚すくいのポイのように
ひと夏の思い出は掬えそうで掬えなくて
ゆっくりと海側へ泳ぐ右の膝頭を逃すまいと
焼きつくような決意がじかに伝わってきた
「ちょっと疲れちゃった」は恋のマナー
あなたは表情ひとつ変えずに
暗い山道へ左折ウインカーのせわしい点滅
「ねえどこへ行くの」と問えなくて
乗りかかった舟だから黙ってあなたについて行く

   グループ"ラヴ・ジェニック"
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