Blue Note(斜光線)/恋月 ぴの
いたページに目を落とす自分に酔う
週末の天気が晴れ時々曇りなら
晴れているうちに陰干しでもしよう
季節の変わり目に脱ぎ捨てた
しがらみだとか忘れてたくとも忘れられない
記憶の断片とも言うべきものたちを
週明けにも訪れるだろう熱波の季節に備え
何処かに仕舞わねばならない
長く深い呼吸が出来る程の適度な空間と
永い眠りを妨げぬ暗い静けさのなかで
それらは落ち葉の舞い散る夢に眠る
やがて快速電車はターミナル駅に到着した
乗り降りするひとの流れに気を取られていると
突然、目の前におとこのひとが立ちふさがっては
まるで白昼夢から覚めたかのように視界が開け
つま先の痛みが我先に空いた席へと導いた
隣のひとに気付かれぬよう安堵のため息をつく
生きている証ともいえる獣の生暖かさを
わたしに無理やり押し付けたりして
忙しそうな仕草で降り立ったおとこのひと
離れているときには決して感じ得ることの無かった
危うさを感じる獣の匂いにむせ返りながらも
誰かに何かを委ねたい思いに駆られ
わたし自身を生暖かさのかたちに添えてみる
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