石の花あるいは山のサロメ/佐々宝砂
 
あの男はこちらをみようとしなかった
真っすぐなまなざしはただ至高をみつめた

わたしのうつくしい洞窟に散在する
瑪瑙 水晶 玉髄
わたしの配下にあるそれら輝かしい石の花々を
あの男は全くかえりみることがなかった

あの男の微笑のためにならば
石の花のすべてを山の持つ富のすべてを
わたしはあの男に預け渡したのに

けれどあの男はありもしないものをみていた
掲げた旗はありもしない風に吹かれた

だからわたしはあれをころし

みかげ石の台座に玉髄の皿を置き
そのまわりを水晶で飾りそこに首をのせ
それから旗を裂いて縫って
深紅のドレスをつくったのだ

わたしの配
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