女王の片恋に関する11のソネット/佐々宝砂
黴。
赤ワインみたいなすっぱい匂い。
きみはゆるり風化してゆく、
柩の暗闇で。
きみの黒いマントは、
きみのちいさな蝙蝠は、
きみのとがったうつろな牙は、
もうすっかりぼろぼろに崩れた。
女王はあかるく唄う、
あのひとは死んだ、
本当に死んだ、
唄いながらパン種をこねる、
かつてきみを構築していた灰に、
卵とバターとイーストを混ぜて。
その9
ビールとジャガイモとベーコン、
宿の暖炉はあかあかと燃える。
そしてきみは吟遊詩人、
弦をつまびいて唄う。
そなたの唇におちる死の影を
わたしはどのように払おうか?
耐え続けているお
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