女王の片恋に関する11のソネット/佐々宝砂
毛だらけの口吻に、
きみは咥えられている、
煙草みたいに。
昨日まで折り目があったズボンには、
広範囲にわたって茶色い汚点。
それが血なのか体液なのか尿なのか、
きみは考えたくない。
白いワイシャツは
ずたずたに裂けている。
胸板には無数の掻き傷。
洞窟の入口で天を仰いで、
女王は待っている。
期待に胸をふくらませて。
その6
きみが見知らぬ部屋でめざめると
ベッドサイドにきみがいる。
鏡をのぞいたときよりも
はるかに親密そうな顔をして。
もうひとりのきみは
きみの声で愛を囁き、
きみの顔でくちづけする、
女王はそれを受け容れる
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