異形の詩歴書 高校編その1/佐々宝砂
の、それは「天体」だった。空にあるものはみんないい、と稲垣足穂が書いた、その言葉をそのまま飲みこんで、私は毎日毎日飽きもせず夜空を見、星空に関する本を読んだ。日本の星の古名についての第一人者野尻抱影が書いた本も愛読した。ギリシャ神話はもちろん基礎文献、それだけじゃ足りなくてアラビアの伝説から中国の伝説、太平洋のちっちゃな島の伝説までチェックした。
私がいちばん愛した星座の本は草下英明の『星座手帖』である。この本は、星座紹介の前にいちいち小説や詩からの引用文が載っている。私はこの本ではじめてマラルメに出逢った。それは「秋の嘆き」の最初の一文だった。ラフォルグを知ったのもこの本だったと思う。
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