異形の詩歴書 高校編その1/佐々宝砂
う。稲垣足穂の文章もこの本に引用されていた。今もうこの本が手元にないので定かでないけれど、カラス座の項目に引用されていたはずだ。
私は星座の中でカラス座がいちばん好きだった。地味なカラス座、バカバカしくも情けない伝説を持つカラス座、「まあ可哀相」と稲垣足穂の文章に書かれるカラス座、暗い星ばかりで、しかしこぢんまりとまとまって妙に印象に残るカラス座……なまぬるい春の夜空に、カラス座はヨットのような姿を輝かせて浮かんでいた。どこかに進んでゆくかのようだったけれど、次の日も、そのまた次の日も、同じ空に浮かんでいるのだった。
2002.7.(初出 Poenique/シナプス)
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