異形の詩歴書 高校編その1/佐々宝砂
 
い本も恐ろしい本もあった。私は驚喜して本を借りようとした。……しかし借りられなかった。新入生のカードはまだ作成されていなかったし、図書館には誰もいなかったからである。下校をうながすチャイムの音が聞こえてくるまで、私はぽつねんと図書館のカウンターに向かって座っていた。

 いま私は、あの学校図書館よりもたくさん本のある図書館を知っている。そんな小綺麗な図書館の小綺麗なカウンターに数冊の本を置いてお願いしますと司書に言うたびに私は、高校図書館の小汚いカウンターを思い出し、私が16歳だったこともあったのだと考える。もう、あのとき感じたようなおののきを感じることはできないのだと考える。



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