異形の詩歴書 〜10歳/佐々宝砂
する必要はない。むずかしいコトバを、子供は単純におもしろがるからだ。それはさりげなく、意味もなく使われてよい。たとえば、『ことばあそびうた』にでてくる「むいみなそねみ」というコトバを年少の私は理解しなかった 、でも、その音の連なりを面白いと思ったのだし、だからこそ私はそれを今でも覚えているのである。
耳に快いコトバで綴られた詩であれば、子供は容易に難しい言葉を覚える。でもいくら韻を踏んでいるとしても、ガチガチと硬い漢字ばかりで書かれた漢詩は、子供の耳に馴染まない。それはあまりにもつまらないものだと思われ、私はどんどん漢詩が大嫌いになっていた。私が陶淵明によって漢詩と出会い直すのは、ずっと
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