硝子の鳥籠/塔野夏子
 
空っぽの硝子の鳥籠に
早春の光が淡く虹色に差す

そうすると
わたしはうすい水色の服を着たくなる

――籠の外では生きられない
  華奢ないきものだったはずなのに

  でも囀りは 今でもきこえる気がする

  きこえる気がする
  ような気がしている
  だけかもしれないけれど

やがて空っぽの鳥籠を
ほのかにつめたい花びらの群れが通過する

そうすると
わたしはしずかな銀色の雨を待ちたくなる



   グループ"春のオブジェ"
   Point(7)