春の駅/塔野夏子
 



白い駅のベンチに
坐っていると
うつろな心臓を
ひとつの喪が
列車のように通過してゆく

それとは関わりのない
やわらかな事象として
少し離れたところに
色とりどりのチューリップが
一列に咲いている




   グループ"春のオブジェ"
   Point(6)