ことに春のはじめは/塔野夏子
すべてのものはうつろう
そのうつろいは後ろへとたなびく
そのたなびきはにじみつづけて
私はかなしい
すべてのものののうつろいとそのたなびきが
かなしい
すべてのものはうつろいつづけるから
私はいつでもかなしいのだが
ことに春のはじめはかなしい
私みずからも心ならずもうつろい
そのうつろいを後ろへとたなびかせている
それをふりむくたびかなしい
時にたえがたくかなしい
ことに春のはじめはかなしい
あらゆるうつろいのたなびきが
なんともいえぬやさしい色あいでにじみつづけて
私はとてもかなしい
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