置き去りのリップが僕を宥めるから/時雨
 
イを握りしめて、意味もなく寝たふり。

別に鳴って欲しい訳じゃないけど。


僕の机の上にキミによって置き去りにされた淡いピンクのリップ。

小さく自分を自己主張してる。

「大丈夫。」て自己主張してる。

僕を優しく宥めるように。

そのリップでキミを連想したなんて変態くさいこと言わないけど。


この後、すぐにイライラやモヤモヤが解消されたのは、
僕のケータイがキミによって鳴ったせいじゃないし、
ましてやキミの隣に居た『誰』がキミのお兄さんだった、
なんていうベタなオチが待ってたせいでもない。








置き去りのリップが僕を宥めるから。




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