夏桃のくろい茂みが虫にくわれて
そのむこうから
空が剥がれてきた
街には コスモスが
恋愛のように咲いたりしていた
だが見おぼえのある人は
ひとりも通らなかった
とある道ばたの 積みかさなった石塊(ころ)の間に
おれは 犬のようにすわっていた
ガラスの眼球に桔梗の空間がうつっていた
けれども おれは知っていた
永遠などというものは
結局 どこにも無いということ
それは蛔虫といっしょに
おれの内部にしか無いということを
何かやさしいものが
耳もとを掠めていったが
振りむいて見ようともしなかった
はじめから おれには主人がなか
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