近代詩再読 八木重吉/岡部淳太郎
をすんなりと納得させてしまう力を持っている。それは、作者の作り出した行間の「何か」が「息を ころせ」という前段と「あかんぼが 空を みる」という結語との間に、読者に何となく橋をかけさせてしまう力でもある。それは読者に苦痛を強いるようなやり方でではなく、読者が気づかないうちに自然とそうなってしまう類のものだ。
ここに、八木重吉の詩が持つ不思議さがある。どの詩を見ても特別難しい言葉やややこしい喩が使われているわけではない。その詩はあきれるほどに平明で、ひねりがなさすぎると思えるほどだ。だが、それにもかかわらず、(いまふうに言えば)決してポエムっぽくならない。平明であるということと強靭であるというこ
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