月曜日の幽霊/岡部淳太郎
 
またひとつ、なさけない歌


#1

夜は水のように滑らかで
闇は塩のように喉にひっかかっている
残る思い
その中で 何故と問う暇もなく 男は死んだ
海の そのくるった観念の中で
またも残る思い
何故と問う暇もなく
女は男を失った
男が死んだ時
女は快楽のように泣いた

#2

夜毎の逢瀬 かつての
何故と問う暇もない熱情
男は女を求めた
女は男をさらに求めた
波のように互いの間を往来する欲望
何故と問う暇もない 夢の刻
二人の間で確実にひとつずつ増える秘密
だが いまや男は海にのまれ
女は塩の味で悲
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