私の隣に幽霊が座っていた/岡部淳太郎
 
空いている電車に乗り 席に座る
駅に停まり 駅を通過し
また駅を通過し 駅に停まり
車内は次第に混んでくるが
他の席はどんどん埋まってゆくが
私の隣はいつまでも空いたまま
誰も座ろうとはしない
それもそのはずです
私の隣には人の目に見えない幽霊が
座っているのです
だからみんな座りたくても座れないのです
そこに座ってしまえば
幽霊を押し潰してしまう
恨みと未練の残った魂を押し潰してしまう
だからみんな座れないのです
それは私が汚れた中年男だからではなく
私の隣に座るなどもってのほかだと
みんなが私を毛嫌いしているわけでもなく
ただ単に
私の隣に幽霊が座っている
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