無縁仏/岡部淳太郎
ひざいとともにそんざいするのです
どんなしゅぞくにもけいるいにも
かかわりなくぼんやりとさんざいする
そんな私を生きている人たちは
絶たれたものとして仏と呼んではとおざけます
けれども私はそんなものではなく
あるいはたとえば鬼のようによこしまな
ものでもなく私はただ死んでいるとちゅうの
夜の湿気のなかにひろがっていく
さだまらないかたちでしかないのです
夜がふかまってちろちろと
あわくもえる線香のようなこころが
口をあけてちっそくしているとき
卒塔婆がくるいまあるい月が
おしつぶされていきます
そのとき私のゆうれいのかたちは
ますますとうめいにひろがって
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