無縁仏/岡部淳太郎
 

どこまでもうすくひきのばされて
眠る人のまくらのそばにまで
ゆっくりとはいよってくるのです

私はちゅうだんされて
  けいぞくされて
ここにいるのです

あるいはそこにもどこにでも
無縁のさびしいかごうぶつとして
私はせんざいしへんざいするのです

どうせすべては無縁
ながいときがたてば
どんなつながりも絶たれて
糸を切られてぶらりとぶざまに
私とおなじくさびしくなるのです

だあれもいない夜です
だれもが無縁にちらばって
だれもが仏とか神さまとか
わけのわからないけむりのようなものになって
夜をおいかけてはたたずみつづけるのです
それはこの世のおわり
世界が死んで
私だけがここにいるのです



(二〇〇八年六〜七月)
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