死神と私 −真夜中に降る雨−/蒸発王
騒がしく
死化粧によって笑った夫の口元が憎たらしくて仕方がありませんでした
怒りで震える私の隣りで
“真夜中に雨が降ると良いですね”
と死神が慰める様に言うのが
やっと聞き取れたくらいでした
火葬が終わって三日たった夜のことです
細くたなびく前線が町全体を覆いました
秋雨です
銀糸の雨が空と大地を結んでは切れ、結んでは切れ
たえまなく降り続けています
窓越しに手を伸ばし始めた冷気にカーテンを閉めると
けたたましくドアが叩かれました
開けるとずぶ濡れの死神が立っていました
雨が降っているよ と死神は笑顔で言うと
傘もささずに私を雨の中へひっぱ
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