死神と私 −真夜中に降る雨−/蒸発王
 
“真夜中に雨が降ると良いですね”
押さえ切れない怒りの中で
死神の言葉はそれだけしか聞こえませんでした



息子が一人暮らしを始めました
あの子にも手がかからなくなって
お互いに二つの手の平を眺めながら
歳をとったものだと溜息をついた昨今

夫が逝ってしまいました

死神を名付け親に持つ私です
そんなに驚きはしませんでした
葬儀屋に連絡して
お香典返しの準備をして
喪服につける真珠の首飾りを探して
あっというまに葬儀の受けつけに座っていました
黒い群集が棺の周りを埋めていくのを
まるで一斉に飛び立つ雀の数を数えるように
ぼんやりと見守っていました


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