死神と私 −蒼い電車−/蒸発王
べく人の多い車両にのりなさい
蒼い電車に出会ってはいけませんよ
と
何回も言い出したのです
意味が分からないのは毎度のことなので
無視して部屋を出てきました
帰路
身体が粉々に砕けてしまいそうな
寒い
深夜です
私の乗った最後の橙色の快速電車が
光線のように夜の闇を切り裂いて走ります
夜の長い腕も列車の速さに負けてすり抜けて行きます
車両には人が少なく
私の他に酔っ払った中年サラリーマンが寝言を言っています
こおこお と冬の微粒子と列車のこすれる音に
窓の外を見ると
対向レールにぴったりとくっついて蒼い電車が走っていました
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