扉の物語/アンテ
 
んざりして
街がこんなに嫌なことで溢れているのは
そう望むだれかのせいだと考えた
その想いは日に日に強まり
見えないだれかを憎みつづけるうち
彼女は気がつくとまた扉のまえに立っていた
迷うことなく扉をくぐると
そこは暗闇のなかで
ふり返っても扉はどこにもなかった
手探りで進みつづけても
なにもなくて
なにも見えなくて
膝をかかえてうずくまると
それ以上一歩も進めなくなった
なぜ嫌なもののことしか考えられなかったのだろう
彼女は目を閉じて
別のだれかが扉を見つけて
そして自分が街にいることを望んでくれる
そんな時のために
少しだけ眠っておこうと考えた
耳もとを風が通りすぎたような気がしたけれど
手をのばしても
なににも触れなかった



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