欲の物語/アンテ
(喪失の物語)
彼女の胸には心臓がなく
代わりに小さな箱が埋まっていて
願いを唱えながら手を入れると
どんなものでも取り出すことができた
彼女は箱の存在をだれにも知られないよう
常に服でしっかりと身を包み
必要な時だけ
だれもいない場所で蓋を開け
こっそりと欲しいものを取り出すようにした
ところがその日はとても暑く
我慢ができなかったので
森の奥にあるだれも知らない小さな泉で
裸になって水浴びをした
つい夢中になって長居をしていると
突然少年が現れて
いっしょに泳いでもよいかと訊ねた
彼
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