夏のアンセム/塔野夏子
雨の季節が過ぎ
風の中から 川面から きらめく緑の梢から
いっせいに放たれてゆく
夏を奏でる音符たち
それらはゆらめき絡み合い
透明なアンセムになる
その響きに
意識を浸せば
やがてこの身体からも
つぎつぎと音符たちが生まれはじめる
あざやかな花たちも 閃く逃げ水も
白銀の雲も 長い夕映えも 潤んだ星たちも
覚めているときも 眠りも その奥の夢までも
時空すべてが旋律になる
時に華麗に 時にせつなく
いくたびも転調しながら
うるわしく流れつづける
夏の限りを
夏の果てへと
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