残暑景/
塔野夏子
誰の記憶の残暑に
響く蝉時雨か
夾竹桃は紅く照り映え押し黙る
正午の陽炎――
誰の耳に聞こえてきたのか
その遠い声は
雲が湧く
わたしの知る あるいは知らない存在の
残暑の記憶に
幾重にも深まるひとつの刻印
その刻印から立ちのぼる予兆――
雲は高く湧く
蝉時雨もまたひときわ高まり
夾竹桃は紅く照り映え押し黙る
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