炎 昼/
塔野夏子
真夏の空の濃い青から
幾重にも時間が墜ちてくる
墜ちてきては蝉時雨に砕けて散ってゆく
強い光線のもと
こんなに明るい真昼なのに
どこからか漂う 昏い水の匂い
それは私のものではない(はずの)
記憶を呼びさます
過ぎ去った日々の けれどいつか誰かの
まざまざと現在であったことの
蝉時雨に砕け散る時間の中で
私は立ち尽くす ひとつの
白い髑髏(しゃれこうべ)を抱えている心地で
遠い地平にも 髑髏に似た雲が立つ――
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