晩 夏/塔野夏子
 
いつかこの世界が終わるなら
それは夏の終わりのようであればいい
光と熱はなおも強く地上を
支配しようとしているけれど
加速度をつけて日暮れは早まってゆく
僕らは睡くなってゆく

漂っていた水風船の
とりどりの色も萎れゆき
向日葵の影も傾き
つくつく法師の声の間合いもほどけゆき

日暮れがますます早まって
僕らはもう睡ってしまう
いつかこの世界が終わるなら
それは夏の終わりのようであればいい
と 云ったのは 誰だったろう

夏の次の季節の名は 忘却
記憶の襞に挟んだ夏の押し花を
僕らはもう ひらくこともない


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