ノート(歩歩)/木立 悟
 




何度泣かせるのだ と
微笑むほど泣いた
泣いた 泣いた
そして 泣いた


治らない傷こそ生きている証だと
血のついた指で食べつづける菓子
何もかもがほどほどの
すぐに忘れる菓子


秘密とは言えない秘密を競い
痛みは痛みでなくなってゆく
どこかで聞いたことしか言わない人々
毎日 夢に出てくる人々


花のまわりには花があり
ひとりのまわりには誰もいない
降るものすべてに泣きながら
手のひらの器の音粒に笑む














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